近況

忙しいのです。私がホームページ更新はおろか掲示板にあまり書き込みをしないのも忙しさ故です。とはいえ、あまりに廃れている当ホームページの現状を憂慮して私の忙しさ自慢をすることにしました。

宣伝女優
 

 さてもまず忙しいのは9/14の公開が迫った「千年女優」宣伝周りのこと。
「ドリームワークス全世界配給決定」だの「文化庁メディア芸術祭・アニメーション部門大賞受賞(同時受賞・千と千尋の神隠し)だのと景気の良さげな惹句はあれど、世間での作品の認知度は思うように上がってはいません。
寂しいことに取材の数はそれほど多くないのですが、それでも最近は雑誌「SWICH」とか「キネマ旬報」、ウェブサイト「EXCITE JAPAN」などの取材を受けました。すでに読売新聞などでインタビュー記事が掲載されたりしていますので、これから公開、公開期間中に媒体上でお目にかかることもあるかと思います。
これから先の予定ですと、毎日新聞や共同通信の取材や某中華鍋系のテレビ番組や文化放送のラジオ番組出演も予定されています。
数が多くないとはいえ、取材で質問される内容は大同小異なので答えも自然と口に馴染んだものが多くなってきました。そろそろ嘘でもつこうかな(笑)
9/3は大阪での試写が予定されていて、私も舞台挨拶をすることになっています。関西在住の方是非いらして下さい。
9/9にはヤマハホールのイベント付き試写に出演予定。ゲストは……秘密。
翌9/10は新宿ロフトプラスワンのイベント出演。「千年女優」キャラクターデザイン・作画監督の本田“師匠”雄氏、「MEMORIES/彼女の想いで」作画監督などで知られ、「千年」で原画、作画監督も担当してくれた井上俊之氏も一緒に出ます。
このイベントでは「パーフェクトブルー」や「千年女優」は勿論のこと、私が脚本で参加した「彼女の想いで」や、新作「東京ゴッドファーザーズ」についても多少触れられると思いますので、興味のある方はご参加下さい。多分酒を飲みながらのトークになるはずなので、暴言……あ、いや、失言……あ、いや、多少口も滑らかに色んな話が出てくると思います。

取材やイベント、これらは実作業を伴わない喋る仕事ですので、数が多くてもそれほど疲れるわけではありませんが、合間合間に実作業が必要な版権仕事も入ってきます。寸断された時間の中でバリバリと実作業できるほど集中力を維持できなくなっているのは、年齢のせいか疲労のせいか。
9/1から都内のあちこちの駅で掲出予定の交通広告のためのデータ組み替え、劇場売りされるパンフレットの表紙用データ組み替え、販売用Tシャツやテレカのためのデータ組み替え、ムック本「千年女優画報」表紙のためのデータ組み替えなどなど。お分かりのように書き下ろし素材はなしで逃げ切ろうとしています(笑)。
もう時間も予算もないんです。
これまで描き下ろした版権物は「チラシ・ポスターのメインビジュアル」「プレミアムチケット付属テレホンカード用」「ニュータイプ見開き3回分」「サントラ盤ジャケット」など。どれもなるべく一所懸命に描いているのですが、監督自ら版権イラストを描いているのは珍しい、と後ろ指を指されることも(笑)

1000nenmoon
これがサントラジャケットイラスト
 

 イラスト、取材やイベント出演はまだ良いのですが、困るのは写真撮影です。先日も脚本の村井さんと一緒にパンフレット用の写真撮影もありましたが、写されるのは苦手です。雑誌取材なんかでもけっこう撮影が多くて困ります。とある屋外の撮影で子供用のブランコに乗せられたのはかなり閉口しました。あの写真が採用されないことを願ってます。

千年女優画報など
 

「千年女優画報」と名付けられた、いわゆる「千年」ムック本のための仕事もまだ終わっていません。このムックのために音楽の平沢さんと対談したり、日本大学心理学教授・横田先生に聞き手をお願いしてインタビューをしてもらいました。これらに伴うテキストチェックも多くなってます。
対談・インタビューテキストは、私が言うのも何ですが、どちらも非常に興味深い示唆に富んでいますので是非「千年女優画報」をお買いあげ下さい……ってほとんど宣伝になってます(笑)
日本大学心理学教授・横田正夫先生とは「日本アニメーション学会」のシンポジウムに参加したのが縁でお話しする機会をいただきました。先生はアニメーション作品を心理学的に見る、といった研究をされており、その視点は作家側の立場で見ても非常に興味深く面白い。「パーフェクトブルー」やその前の私の漫画作品も御覧になっているようで、試写で「千年女優」も見てもらいました。先生と個人的にメールをやりとりさせてもらっている中で、私の作品について非常に面白い指摘を多数いただき、私の希望で「画報」の聞き手をお願いした次第です。
また先生には劇場用パンフレットに寄稿もしていただいております。
「千年女優画報」は場面写真はもちろんのこと、設定資料や原画やレイアウト、アニメ雑誌に描き下ろしたイラストなども収録。また、千代子を演じた3人の声優さんによる鼎談、立花役・飯塚昭三さんのインタビューやスタッフインタビューなどのテキストも満載。大変濃い中身になっております。

VSダーレン

1月18日、「π」のダーレン・アロノフスキー監督と対談してきた。
新作「レクイエム・フォー・ドリーム」の宣伝のため来日しているそうで、私が対談するのもその一環。私の方もやっと完成する「千年女優」の良い宣伝機会というつもりで引き受けたわけだ。
「Esquire」という、雑誌での対談である。「エスクァイア」と表記すればよいのであろうか。辞書によると、
「《名》[通例 Esq. で用いて] …殿, …様」
なんだそうな。
私は一度も買ったことのない雑誌だが、その名前や店頭で見かけた表紙のイメージからは何やらちょっと高級そうな気がしたので、多少私も外見を気づかって行こうと思った。が。いかんせん普段着しか持ち合わせていない。多分写真撮影はあるんだろうから、せめて鼻毛くらい切ってみた。へっくしょん。電動鼻毛切りは便利である。
ちなみに対談の掲載は「レクイエム〜」の公開時期に合わせるということで、まだ先らしい。

外苑前で地下鉄を降りて、地図に従ってホテルに着く。が、入り方がよく分からない。何だこのホテルは、不親切な。会員制のホテルだけあって一般ピープルには入りにくく出来ているのか!と憤りさえ感じていたが、実は私が裏口から入っていただけであった。憤ってすまん。
ロビーで「エスクァイア」の編集者の方と合流して取材場所だというダーレン・アロノフスキーが宿泊している部屋に行く。いい部屋に泊まってやがる。売れないアニメ監督ではビジネスホテルが関の山かもしれない。

スケジュールが過密気味のアロノフスキー監督は、この部屋で缶詰になって取材を受けていたようで、やや疲れ気味の上に体長も万全ではないと聞いていた。実際この日、予定の半分で切り上げた取材もあったという。後で聞いたところによると同じ質問ばかりされて疲れたのであろうとのこと。それはよく分かる。分かる分かる。聞く方は初めてでも聞かれる方も初めてとは限らないのだ。ふっと頭をよぎる。
「実写で撮ろうとは思わなかったのか?」
「パーフェクトブルーというタイトルの意味は?」
うるさい。

アロノフスキー監督のこの日の取材予定は、私との対談がこの日の最後だったのだが、私のすぐ前の対談相手が森本(晃司)さんで、意外な場所で馴染みの人に遭遇してちょっと驚いた。吉祥寺の飲み屋ならいざ知らず、こんな会員制のホテルの部屋なんて。
そちらは「コミッカーズ」という雑誌での対談のようで、アロノフスキー監督は疲れ気味にも関わらず、森本さんとの対談は下品な話題で大いに盛り上がったようである。
下品な話題で盛り上がったと聞いては同じことは出来ない。ウンコの話はやめよう。いやそんな話は端からするつもりはないけど、なるべく下品じゃない方で考えることにする。

アロノフスキー監督は31歳の白人、痩身で少し神経が細そうな感じのする男であった。会うなり「ファンだ」といわれても、私としては日本人得意の曖昧な笑顔で答えるくらいしかできない。「ナイストゥミーチュ」
対談後、食事もご一緒させてもらったのだが、彼は肉は食べられず、酒もほとんど飲まずタバコも吸わない。それでアディクション(中毒)を題材にした「レクイエム〜」を撮っているのはちょっと意外なような気もしたが、案外そういうものかしれない。もっともワーカホリックだそうな。共感しよう。

さて以前掲示板でも触れたが、彼は「パーフェクトブルー」の実写化権を買ったと聞いていた。ゆえに私はこの日次の言葉を彼にぶつけるためにこの対談を引き受けたといっても過言ではなかった。
「たとえアニメーションであれ、すでに映像化した作品をさらに映像化しようなど、一体どういう料簡だ!?」
ウソに決まっている。どのくらい本気なのかちょっと聞いてみたかっただけだ。
が。結果としては契約に至らなかったそうな。

アロノフスキー監督は随分前向きに実現しようとしたようで、具体的な値段の交渉もしていたようだが、「アロノフスキー以外が監督することはない」という条件を盛り込めなかったことなどが原因で契約できなかったらしい。
私としては特に残念でもないが、アロノフスキー監督はなかなか良い人だし私のファンだというし、賢そうな人だし私のファンだというので実写もちょっと見てみたかったような気もした。
「ダーレン、ネタがないならオレが考えてやろうか?」
そんなことは言わない。
彼もすでに次の作品の脚本を進めているようで、その脚本家も一緒に来日していた。アロノフスキー監督のハーバード時代のルームメイト、なんだそうである。「すわホモか!」と邪推が閃光のように頭を走るが、違うらしい。いや別に私はそういう趣味に対する偏見はないので誤解しないでいただきたい。

さて対談である。編集者がとりあえずお題を提供する。
「じゃあ、まず“パーフェクトブルー”について」
何でやねん。「レクイエム〜」の話をしようや。良識を身に付けた大人として私は、今回は相手の新作の宣伝に協力する形で隙あるごとに「千年」の話題に無理矢理つなげる気でいたのに。いいじゃん、もうそんな古い話。
「レクイエム〜」の宣伝担当の方からは「もっと“レクイエム〜”の話を」という目に見えぬ波動を感じる。ちなみにこの「レクイエム〜」の宣伝担当の女性は「パーフェクトブルー」の宣伝でお世話になった方である。そんな縁もあってこの対談である。
縁は他にもあって、「レクイエム〜」と「パーフェクト〜」はまんざら遠い間柄ではない。うちの掲示板の読者の方は覚えておられるかもしれないが、「レクイエム〜」には「パーフェクト〜」に随分影響されたシーンやまるごと真似たカットがある、と以前書いた。
私「“レクイエム〜”にはどこかで見たようなシーンが出てきて、見ていてちょっと気恥ずかしかった(笑)」
ダーレン「あれはオマージュだ」
“オマージュ <1>尊敬。敬意。<2>賛辞。”
おいおい益々いいやつじゃないか、ダーレン。

もっとも顕著なパクリ……いやオマージュの表現は、「パーフェクト〜」で未麻が膝を抱えて湯船に浸かっているところを真俯瞰で映すカット、それに続く水中からのアオリでゴボゴボッと息を吐くカットである。これを「レクイエム〜」では構図も芝居もそのままにジェニファー・コネリーが演じている。
「レクイエム〜」ではまた「赤いドレス」」が重要なモチーフとして登場する。これも「パーフェクト〜」でルミがラストに着る赤い衣装が念頭にあるとのこと。太ってしまった中年女がかつてジャストフィットしていた赤いドレスを無理矢理着た様はまるでルミみたい。
しかしパクリ過……いやオマージュのし過ぎじゃないのか(笑)、ダーレン。

アロノフスキー監督は今でも、というか今だからこそ「パーフェクト〜」を実写でやってみたいと思っているそうな。
聞くところによると最近アメリカではいわゆるアイドル的な存在で売れているグループだかがあるらしい。“なんとかーズ”だったと思うが名前は失念した。
ともかくそういう背景も考えると「今“パーフェクト〜”の実写を作れば絶対受ける」と力説する。アイドル的存在に対して日本ほど免疫のないアメリカでは、まだ彼女たちが「処女かどうか?」が大問題になっているのだとか。
私「日本ではそんな問題は随分前に終わってしまった(笑)現在はもっと歪な形でファンとアイドルの関係が深化している。変態みたいなオタクは沢山いるらしい」
ダ「オタク!!」
「オタク」という言葉にえらく反応するダーレン。
ダ「オタクという言葉が大好きだ。英語でそれに当たるものがない」
確かに「オタク」という単語は「ゲイシャ」「フジヤマ」「スキヤキ」「カラオケ」「ポケモン」に並んで世界で通用する言葉かもしれない。
彼の前作「π」というのが正に「オタク」を扱った映画と言える。
私「“π”はオタクが社会性を獲得して行く話でしょう?」
「まったく違う」と言われたらどうしようかと思いましたが、
ダ「まったくその通りだ」
あの映画で面白いのは天才性を持っていたかもしれないオタクが社会性を獲得することで逆にその才能を失ったかもしれない、という皮肉な点。実際それはよく見られるケースかと思われる。また冒頭、主人公がドアに開けられた小さな穴から外を覗く様や、子供や女性としか、それも薄いコミュニケーションしか取れないあたりは上手くオタクを描いているように思える。

ダ「現在の仕事は?」
私「昨日、“千年女優”という新作の0号試写だった」
ダ「どんな内容?」
私「元女優の婆さんが一代記を語るのだが、そこに彼女がかつて出演した映画の断片がまじってくる。それは遙か中世から近世、近代、現代そして未来までもある男を追いかけて行く女の物語だ」
ダ「面白そうだ。女優の話ということで“サンセット大通り”なんかは意識したか?」
私「いや、意識があったとすれば“スローターハウス5”かな」
ダ「“スローターハウス5”!大好きな映画だ」
そりゃそうだろう。あれが分からないやつは目が節穴だ。
私「ああいう別々な時空間が同時に認識されたり、連続している時間、あるいは他者と自分といった明確な区別が存在しているはずの関係が混沌としてくるような話が好きだ」
ダ「……それは私が次に作ろうとしている映画のテーマに非常に近い」
多分アロノフスキー監督と私の指向が似ているのかもしれないが、こうしたことをテーマとするのは先進国においては同時多発的な傾向に思われる。
ダ「新作の予算はどのくらい?」
私「1億4千万……くらいかな」
ダ「!!アメリカに来てくれたら僕はその10倍以上は軽く集められる。是非やろう」
「軽く」と来たもんだ。「やろう」だとさ。
前作の「π」が制作費6万ドル、約600万円という自主映画に毛の生えたような予算、2作目でその百倍どころかそれ以上の制作費という出世の早さを考えると、確かに「軽く」というのも頷けよう。やるな、ダーレン。
前作の「パーフェクト〜」が一億円、2作目で何とその1.3倍という素晴らしい出世の歩みを考えると我ながら情けなさも感じるが、やはりアメリカと日本の土壌の違いを思わざるを得ない。
私「予算は欲しいな」
ダ「ただし、英語の作品だ」
私「……」
そりゃそうだろうな。しかしこの対談だって通訳越しに交わしているのだ。黒澤の「デルスウザーラ」の例があるとはいえ、言葉がろくに分からないで映画を作れるとは思えない。
私「……セリフ無しにしようかな(笑)」
ダ「サイレントか。音楽だけのアニメーション、それでもいいからやろう」
まったく、アメリカ人は(笑)
しかし必ずしも調子のいい冗談とは言い切れないようだ。
オフレコでちょっと真面目な仕事の話もして、実際、とある仕事をやる気はないか、とも言う。ありがたい話である。もっとちょうだい、オマージュ。

対談後、渋谷のタイ料理屋で一緒に食事をとりながら色々な話をさせてもらったが、例えば「千年」がアメリカで上映される機会があるようなら、
「僕が評論家とか文化人とかに声をかけてスクリーニングをコーディネートしてもいい」
とも言ってくれる。違うな。あまりに状況が違う。逆はあり得ないからなぁ。いくら社交辞令とは言っても私には口に出来ないセリフだ。
なんか情けなくなってきた。オマージュを捧げられてる方が知名度も社会的信用も使える予算も少ないんだから情けない話だ。あああ……食えなくなったらダーレンに仕事をもらおうかな……メールアドレスもらったし……けど社交辞令を信じてバカを見るかもしれないしなぁ……向こうが大売れしちゃったら忘れられてるかもしれないし……頼った挙げ句に言われちゃ叶わないからな…………「?あなたはだーれん?」なんて。

すいません。

前世の因果

今年に入ってからは実に更新が滞っている。更新の履歴を見ると、1月こそ週に1度の更新をしていたものの、2月には2回、3月4月になると1回ずつとなり、さらに5月には一度も更新を果たせぬままになっておるではないか。何と無様な。何と怠惰な。ホームページは鮮度が命と言ったのはどの口だ!?……この口だ。

忙しいのだ、娑婆の仕事が。当BBSでは何度か触れている新しいアニメーション作品、「千年女優」に取り組んでいるのだが、まったくもってこいつは私から時間ばかりを取り上げるのだ。時間の貯蓄はすってんてんだ。懐かしい言葉だな、すってんてんとは。今年になって初めて使った。
「千年女優」の状況としては現在コンテ作業なのだが、胸がすくほどの遅れを出しながら亀の歩みのように進んでいる。予想外に難しいところがある。あるからと言って私が言い訳して良いと言うことではない。私が悪い。
資料の本とタバコの煙に包まれながらコンテを進める監督の私の横では、美術監督がこつこつと設定をあげてくれているが、両輪の片側であるはずの作画監督は抱えている潜水艦アニメの作監作業が終わらず、いまだにキャラはラフ設定のままである。大丈夫か!? 早くも“作打ち”の噂も流れて……いや噂じゃなくてその予定が本当に組まれているというのに。しかもコンテの内容はどうにも前のパーフェクト何とかより難しそうだぞ……ってお前が言うな? うん。もう少し楽にしますです。
原画マンにもそろそろ声をかけなければならない時期だ。ぼつぼつと色好い返事も聞いているが、どこに魔物が潜んでいるかは分からない。パーフェクト何とかの反省を生かすのはこれからだ!!力んでどうする。先はまだ長い。
かねてから言いふらしていた「千年女優」HPだが、かけ声ばかりでなかなか立ち上げるまでには至っていない。「予算を取ってくる」と安請け合いしてくれたプロデューサーは一向に音沙汰無し。しかも現在の作業場所が仮住まいなのだ。スタジオの引越は当初聞いていた予定から既に3ヶ月ずれ込んでいるため、何かと不自由している始末。電話もない都会の孤島だ。引越の手間を考え、購入を予定している私のニューマシンも導入の目処が立っていない。今月の末にはいよいよ引越が始まるという真実味のある噂は聞いたので、来月には本格的に場所を構えてマシンを導入し、電子の世界にも作品の橋頭堡を確保する予定のつもりでいると思っているかもしれなくもない。はっきりしたことは何も言えないが、きっと実現……したい。

さて、久しぶりの更新だというのに、何のことはない自作の宣伝ということになっている。BBSでも話題に出た「海帰線」といういにしえの古文書が平成大不況の日本に今甦るのだ!!あ、初版も平成だったか。
ともかくも当ホームページで過去の作品を紹介しておいたお陰で、降ってわいた印税……いや幸運なのだ。美術出版社さんのご厚意である。ありがたい。
ご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、前世の私は漫画家であった。本人はまだ漫画家のつもりはあるのだが、かつて出版された単行本が2冊とも絶版になっている現在、世間様に対して私が漫画家であることを納得させるのは難しい。時折雑誌等で私が紹介されることがあるが、ほとんどが「アニメ監督」とされており、漫画のまの字もありゃしない。私自身段々胸を張って漫画家とは言えなくなっており、漫画家と言い張ったところで「自称漫画家」とか「漫画家(笑)」という自嘲的な気持ちになる。年々職業を聞かれる度に口ごもるようになってしまい、私の外見と合わせてただの怪しげな人になってしまっている。何かこう「コーディネーター」とか「プランナー」といった内実のよく分からない仕事をしている、胡散臭い人間に見られている気がする。ちなみに税務署に提出する書類の職業区分は「美術家」というさらによく分からない業種に分類されている。誰だ私は一体。
再版というのは初めての経験だが、これといって本文には手を入れなかった。気の向いたところだけ気持ちだけペンを入れたりしたが、先にも書いたように本格的に手を入れる時間はアニメに取られているので、表紙を描き下ろすのが精一杯であった。
当HPの読者に一足先にご覧に入れよう。

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 何か「海帰線」というよりパーフェクト何とかみたいなイメージにもなってますが、他にネタも思い浮かばなかったのでテクスチャ三昧になっております。相変わらずPainterとPhotoshopで作っております。当HPのお客様にはお馴染みの手法かもしれませんが、娑婆の仕事で使うのは初めてなので多少は新鮮な気分で描きました。自宅でプリントアウトした感じでは、そう悪くもなかったし、どちらかと言えば割りと気に入っている方です。
まぁこんな絵のついた漫画本が店頭に並んだら手にとって見て下さいな。表紙と中身の絵にギャップがあるのは、詐欺のようにも思えますが、賢明な読者諸氏においてはそのギャップに年月の隔たりを感じていただきたいものです。
それとあとがきは書き下ろし。当たり前か。とは言ってもこのあとがきは6ページに渡る大作で、体裁としては「当HPの特別増刊」ということになっている。ほとんどテキストだけど。当時のことを振り返って過酷だった連載の裏側を想像していただけると良いかと思います。
近頃文章を書いていなかったので、言葉が出なくて困ったな。ひらめきのお通じが悪くなっているのかしら。たまにはHPで駄文でも連ねておいた方が良さそうだ。暇があればの話。
ということで新装「海帰線」はオリジナル版より一回り大きくなって、6/25に発売予定です。懐に余裕のある方は金を恵んでやるくらいのつもりで本を手にしてレジに行って下さい。¥1,200(消費税別)だそうです。ちょっと高いかな。

アニリン

 うーむ世の中はポケモンブームか。流行ってるなぁ、赤と青のエクスタシー。インターネット上でもそういう冗談をいくつか見たが、あまり刺激しない方がよいとは思う。一応業界に携わる身としては、今回の事故を真摯な態度で受け止めることにしようっと。特にテレビ放送においては早めのガイドラインを設けるべきなんでしょうが、ことはそれだけで済むんでしょうかね? 今年はアニメの当たり年でもあり、多大な経済効果と文化的な影響力を認めながらもそういう現象を苦々しく思ってる人間も多いかと思われるし、そういう状況で起こった今回の事故が格好の突破口にならなければいいのだが。ああいう透過光のパカパカが規制されるだけなら問題ないし当然かと思われるが、そこから発展してまたぞろ始まるような気がするな、お得意の「暴力」「性描写」などの内容規制が。どこぞの頭の悪そうな政治家があの赤青のエフェクトを見て「洗脳云々」というような発言をしてたし。まぁ、それも仕方ないか。R指定映画監督としては「すいませんねぇ、ホントに」と謝るくらいしかできないし。アニメ倫理委員会の発足が待たれるところか。略して「アニリン」。可愛くてすてきな響きじゃないか「アニリン」。「アニリン」のキャラクターとか出来ちゃって、それが子供の間で大流行。アニメ化されちゃったりなんかして、一大ブームを巻き起こすことは間違いないだろうな。悪の組織「ボウリョッカー」や「エロチカ大魔王」と戦う正義の戦士・アニリン。子供たちを襲うボウリョッカーやエロチカ軍団を掴んでは投げ、投げては蹴り倒し、過激な暴力で敵がバラバラになるまでやっつけ、そして最後は必殺のリンリ光線! エフェクトは赤と青の……もうやめとこう。