ガッツなニアミス、あんたバカぁ!?

 2/7、赤坂BLITZでP-modelライブ。内容の方はレイヤーグリーンの物語の最終回ということもあり、いつもより長めに演奏しております、といったライブだった。それはそれでまぁ楽しませてもらったのだが今回の主題とは関係ない。問題はその後の飲んだ席でのことである。まず赤坂 BLITZを出たときに目に飛び込んだのは降りしきる雨である。「聞いてないよ」勝一氏の冗談が正に正鵠を射ている。しかるに近場の飲み屋に入り、まずはビールをあおる。メンバーはP-model、平沢関係のライブではおなじみの友達同士、計5名だ。飲むこと十数分か。入ってくる一団、総計6名。どこかで見たような気がするも私の記憶も定かではない。ましてこちらも飲んでいる席だ、細かい記憶など3杯のビールの前には雑音に等しい。しかし何故か、如何に飲んでいる席とはいっても業界に近い話を避けたのは、私の無意識の警告か。
 普段飲んでいる席での話題といえば業界のバカ話だの噂だの悪口と相場が決まっている。「あそこのスタジオって今何やってんの?」「××ってビデオ」「ああ、あの○○がキャラとかいうやつ」「どうなの?」「もうだめだめ」「やっぱりねぇ、よく作るよなぁ」「スケジュールも崩壊してるらしいよ」等々といった会話が酒の席での枕みたいなもんだ。が、この時ばかりは何故かそんな話題はテーブルには上らなかったのだ。やはり何かその話題を避けるベクトルが働いていたのだと思う。
 酒も進みそんな私の無意識の警告も和らいできた頃。ふと隣に陣取った件の一団の会話の断片が耳に飛び込む。「林原めぐみが……」。ギクッ。もしや私の無意識も捨てた物ではなかったか!? トイレに立ったときその一団の一人と目が合う。誰かは知らぬが覚えのある人。さて一体誰であったか? 何と私のヤングマガジン時代の担当の後輩で面識のある人だと判明。今は「ヤングアニマル」の編集とか。お互い「やぁどうも」。そしてその一団の一人の女性が同時に声を上げる。「あ、パーフェクトブルーの監督の……」そうだそれに間違いはない、自慢ではないがその今 敏だ。と、見ると奥の側に座った一人の女性にも見覚えがあるではないか。それも先日たまたま見たテレビ、昼の小堺の何とかいう番組で見たのだ。なんと宮村優子ことミヤムー、逆か。「あんたバカぁ!?」だな。
 そうか、「ベルセルク」、平沢絡みか。あっぶねぇ!何とベルセルク原作者の漫画家もいるではないか。確かシミズケンタロウとか……ッてそれは失恋レストランか。三浦健太郎さんでした。ああ、全く危ないッたらありゃしない。何が危ないんだかはともかく、さすが私の無意識、というより保身のための虫の知らせか。それじゃ言外に違う意味があるみたいだな。いや、別にない、筈、かもしれない。教えない。
ミヤムーはテレビで見た印象より全然可愛かったな。妻と私の友達の握手にも気軽応じてくれたし、何より自分が出演したわけでもない私の拙作「パーフェクトブルー」をビデオで見てくれたと言うし、おまけに「怖かったです」という、大変嬉しいコメントもくれるとは。私は今後ミヤムーには一票投じることにしよう。何のかは分からんが。
 しかし何だか狭い世界なことだ。私と一緒にいた中山勝一氏は「でたとこプリンセス/第2話」の演出を担当しており、私だって原画で参加しているのだが、その主演声優がアスカことミヤムーである。「“でたプリ”ではお世話になりました」と勝一氏。礼儀は大事だ。しかも勝一氏は最近「ベルセルク」のラフ原画もやっている。私だって音楽クリップの編集もしてたし。こんなメンツで飲んでてよくまぁ隣の一団に絡んだ話題が出なかった物だな。うっかりそんな話題に触れて、いつもの調子で「○○って、ホント××だよなぁ」とか言ってた日には、悪気が無くても角が立つよな、やっぱり。いやぁ、ホントに危なかった、と私は飲み屋のトイレで大笑いだ。それにしても不思議だよなぁ、誰が知らせてくれたのかなぁ、死んだおばあちゃんからかもしれないな。有り難う、おばあちゃん。

マリナ!マリナ!マリナ!

先日2/1、週間賃貸こと渡辺満里奈ちゃんに会いました。テレビで見るよりも可愛いではありませんか。満里奈ちゃんと楽しくお話しすること30分程か。アニメの監督もやっておくもんだよな。役得役得。さていかなる経緯で満里奈ちゃん会ったかと言えばテレビ番組の収録だ。勿論昨今の中学生の刃物による犯罪についてもの申す、ということで私がコメントをするという内容だ。そんなつまらないことはいい。パーフェクトブルーについてに決まっている。国営放送の夜中の番組で中華鍋状のアンテナがないことには見られないやつだ。いつの放送かなどということは気にしないように。

渋谷の国営放送内のスタジオに入り、軽い挨拶の後楽屋に通される。担当者に「メークの方はどうします?」と聞かれ、「きっちりお願いします」と言いたい気持ちを抑えて、素人らしく断る。さしたる待ち時間もなく収録開始。他のテレビ局の雰囲気は知らないが、この建物の中がひどく「国営放送」という感じがするのが不思議。何日か前に打ち合わせはしておいたので、あらかじめ質問事項等は知らされているし、他のインタビューで何度しゃべったか分からないほどの定番の質問が多く、気も楽だ。

司会進行は「おしゃれ関係」こと渡辺満里奈ちゃんともう一人「ユースケサンタマリア」という人で、「音楽をやっている」というのと「アニメも好きらしい」ということ以外は私は知らされいない。一体何者なのだ? まさか「ユースケサンタマリア」が本名ということもあるまい。「ユースケさん・タマリア」ということも考えられなくもないが不自然にも程があろう。気になる。

番組収録はお二人の運びが上手なこともあり、緊張感もなく作品に関する質問にテキトーに答えながら実にスムースに進行。「元おにゃんこ」こと満里奈ちゃんが真ん中に座り画面上で私が左に座ったのだが、私の目線はつい「かつての伊集院光のオールナイトニッポン“おべどこ”コーナーのイメージガールナンバーワン」こと満里奈ちゃんに行ってしまう。もちろん「ナンシー関曰く“うまいことやってる存在”」こと満里奈ちゃんを見たいということもあるが、問題はむしろ「ユースケサンタマリア」の正体を知らないという軽い負い目にある。少なくとも彼はパーフェクトブルーを事前に見ているらしい。発言にもその裏付けが感じられる。なのに私と来たら相手が何者かも分からず、どの程度の重要人物かさっぱり分からない。申し訳ない。いくら私がゲストとは言っても何だか失礼ではないか。何より懸念される事態は、彼「ユースケサンタマリア」に向かって話しかけ、もしも予定にはない話題が展開し、しかもそれが彼の正体や職業に関連することであった場合恥をかかせることになるではないか。第一何と呼ぶのが正しいのだ? 周りのスタッフさんたちは「ユースケサン」という日本人お得意の略称で呼んでいるようだが、「アグネス・チャン」のケースもあるではないか。「アグネス・チャンさん」と呼ぶのが初対面の場合には礼儀正しいあり方の筈だ。とすれば一番無難な選択は「ユースケサンタマリアさん」とフルネームで呼ぶことだが、どうにも言いにくい上に、彼のフレンドリーな態度に「ユースケサンタマリアさん」という呼び方では悪い気もする。彼「ユースケサンタマリア」も自分が何者か知らないな、と薄々感じてはいるようだが既にビデオが回っている状態で、急に名乗りを上げるわけにもいくまい。ああ、気になる。

収録も終盤、「パーフェクトブルーというタイトルの意味は?」というまたもや定番の困った質問も出る。そこは私も大人なので「意味はないです」と真実を語り、「作品に点数をつけるとすれば?」という更に困った質問には「そういう何でも点数をつけて評価するという日本の教育システムのあり方は常日頃良くないと思っているので、抗議する意味でも点数はつけません」といった内容の親切この上ない答えをお返ししてみたが、編集されるだろうな。

収録はあっけなく終わりスタジオを出ようとして、ふと肝心なことを思い出し、勇気を出してその言葉を口にする。「あ、満里奈さん、良いですか?握手」と右手を出すと快く握手をしてくれた「マリオじゃなくてマリナなの」こと満里奈ちゃんの手は柔らかかったです。ついでに口元まででかかった言葉はさすがに「常識」という検閲の名の下に心の中にとどめておいた。『で、ホントはどうだったの?“カメラ!カメラ!カメラ!”との仲は』

さて「誰でもピカソ」こと満里奈ちゃんとの握手も果たしスタジオを出ようとしたその時だ、すぐ近くにいるではないか、問題の「ユースケサンタマリア」さんが。ふと目が合う。当然彼は見ていたはずだ私が「“最近のガールポップは…”と語れるほど音楽事情にも詳しいその片鱗を見せ、ただの元アイドルと侮れないタレント」こと満里奈ちゃんに握手を求めたシーンを。その正体が依然謎に包まれたままとは言え、ここで彼に握手を求めなければあまりに失礼な気がする。満里奈ちゃんの手の感触が残る右手を『しまった!順番が逆だった』などと後悔しながら差し出す。いかにも「ついで」という感じが彼「ユースケサンタマリア」さんにも感染する。「あ、ボクの方はいつもついでですから」とこちらを慮ったかのようなセリフで笑みを浮かべて握手に応えてくれる。ああ、感じの良い人ではないか。なのに、だというのに私は彼の正体をまるで知らないなんて。本当にすいませんね気を使ってくれて。

私は未だに彼「ユースケサンタマリア」さんの正体がよく分からないでいるのだが、誰か教えてくれまいか、あの、人に気を利かすナイスガイ「ユースケサンタマリア」さんの本当の名前、じゃなくて正体を。

満里奈ちゃんとお会いしたことを書こうと思ったのだが、何だか「ユースケサンタマリア」の謎に占領されてしまった。折角タイトルも「マリナ!マリナ!マリナ!」にしたのに、これじゃ「マリア!マリア!マリア!」にしとけば良かった。

麗しのクララ

 今年に入ってから取り立てて面白いこともなかったが、先日1/18日曜日にパーブル関係のイベントとやらで大変疲れる思いをしてきた。だいたいが3時からのイベント始まりに何故に朝の11時に入らにゃならんのか。脚本の村井氏と暇を持て余すこと2時間、楽屋が一緒になった声優の堀さんと悪態をつき、やっとの事でリハーサルが始まる。リハが明けてまたまた1時間ほどお弁当とビールで時間をつぶし、本番開始。公開もしていないアニメのイベント、それも暴利ともいうべき3,200円の木戸賃にもかかわらず、それなりの数の客が入ったのはさすがに声優さんのおかげ。パーブルの予告編に始まり、チャムの恥ずかしい衣装を着た牛川さんの進行で岩男潤子さん、篠原恵美さん、堀秀行さんらの登場で会場も盛り上がる。本編から抜粋した「ダブルバインド」の上映に引き続き、岩男さんたちによる生のアフレコ出会場大喜びの様子。この時点で3,200円の内1, 000円分楽しんだかと思われる。続いて篠原さんの歌。本編からのダイジェスト12分バージョンの上映。この編集のために先週の水曜日に八丁堀くんだりまでわざわざ出向いたのだ。村井さんが見て感心してくれたので一安心。さすが俺。でももう飽きてきたなぁ「パーフェクトブルー」にも。見る度にパカだのガタだの見つけてちゃ精神衛生上もよろしくないし、なるべく見たくないなぁ。来月はベルリン映画祭に行く予定なのでそこでドイツ人と一緒に見て最後にしようかな。ドイツ語でこき下ろされてもわかんないしな。
 本編81分の内の約8分の1の編集版ということは、劇場の前売りが確か1,500円だからこれだけで190円くらいの価値か。このビデオ上映の後に私と原作・竹内氏、村井氏ステージへ。岩男さん、篠原さん、堀さん、そして松本梨香さんが加わり制作秘話やら苦労談の楽しいトークと台本には書いてある。進行は無し。ッてちょっとちょっと素人だぞこっちは。仕方がないので「パーブル戦記」で書こうと思っていたアフレコのネタでお茶を濁す。イベントに行かなかった人のためにその内容を紹介はしない。そのうち「パーブル戦記」で記そう。この出演者7人全員が参加してのトークのコーナーで500円くらいの価値か。ここまでで色々入れても2、300円くらいだろう。遠いな、3,200円。
 話が盛り上がったんだが何だか分からないところで、M-VOICEのビデオクリップ上映。これは「みなさんに見ていただく」というよりただの宣伝としか思えないのでプラスマイナスゼロ。
 続いて質問コーナー。真面目そうでなおかつ熱心なお客さんのようだったのでこちらも一応真面目に答えてみたが、どうも私がしゃべるとウソ臭く聞こえるような気がして申し訳ない。クスクス。更に出演者全員のサインの入ったプレス用パンフレットを7人の方にプレゼント。緊張した客が出てくるときに小銭をばらまき、ステージから下りるときには階段から転げる、という教科書のコントのような真似をしてくれて笑わせる。彼のナチュラルコントで50円。彼のパフォーマンスは楽屋でも大受けしていた。ありがとう。
 そして最後に岩男潤子さんの歌2曲。これで客も満足したかもしれないが、やはり暴利としか思えないわな、3,200円。
 この後夜の部が7時から始まるのだがそれまでの間に雑誌「FMステーション」の取材で、竹内・村井両氏と作品についてロビーで鼎談。そんな最中も私が気になっていたのはロビーに座っていた大変可愛らしい一人の女性。イベント後の酒の席でその話題を振ったら、さすがに村井氏も気づいていたという。素人にしてはなぁ、などといってたら何とかつてのアイドル・島田奈美ちゃんだというではないか。現在はフリーのライターで「FMステーション」の取材できていた筈だ、と呑気に語るMr.REX。馬鹿者!何故に紹介せんのだ!何で俺たちの取材をさせんであるかぁッ!!と語気を荒げて大人げも無くわめきMr.REXに詰め寄る私と村井氏。決して酒のせいではなかったな、あれは。クソッ、気の利かない男だよホントに、ってそんなことで怒られて彼も気の毒だったろうに。それにしてもお話ししたかったな、島田奈美ちゃん。ちゃん、と呼ぶには失礼な感じの大変良い感じの女性になっておられたようでしたが。
 裏方の村井さんと私にとってはどう楽しんで良いものやら分からんうえに慣れないこのイベントではあったが、もう一つ嬉しいことがあった。
 クララに会えた。クララとお話した。クララが笑った。クララが立った!
 何のことかといえば、吉田理保子さんにお会いした上に長々と色々お話しさせていただいたのだ。吉田理保子さんといえば「ハイジ」のクララ役を始め、数多くのアニメでヒロインを演じていた声優さん。現在は声優のお仕事からは引退して某事務所の「取締役営業本部長」というクララには不似合いな随分と堅い肩書きになっておられるとのこと。楽屋で最初見かけたときに存在感のある人だなと思っていたのだが、名刺を渡されて吉田理保子さんと知ったときには正直私も村井さんも驚いた。「エエ!?吉田理保子さんッて、いや、あの、見てましたよ子供の頃から」と正直に反応したらさすがに吉田さんに「失礼ねぇ」とやんわり怒られた。34歳の私が子供の頃から活躍されていたということはそれなりのお年なんでしょうね。何でもデビューは「ワンサくん」というくらいのベテラン、 他の声優さんに対する態度にも大御所の風格が感じられ、すっかり恐れ入ってしまいました。とにかくクララの素顔は大変魅力的でした。
 夜の部のイベントも無事に終え、解放されたのが9時を回っていたろうか。昼の11時に入ってから約10時間、イベントとはかくも疲れるかと実感して酒をあおる私と村井さんであった。でもいいや、クララに会えたから。

リアルチャム

 28日朝。酒が抜けていないではないか。それもそうか、年末の鉄則に従い朝の4時近くまで吉祥寺のいつもの店で飲んでいて、起きたのは珍しくも午前の10時。酒も眠気も抜ける訳がない。何故に早起きかと言えば日曜日だというのに仕事だ。ああ、かくも今年は休みの少ない年であるか。さて赴く先は有明はビッグサイト。勘の鋭い方かその筋の方にはご存じの同人誌の聖地であり、この日はその聖典の初日である。コミックマーケット、いわゆるコミケだ。私を知る人にとっては、およそ私には不似合いの場所であるにも拘わらず何の仕事で行くかと言えば、無論コスプレ。着るのだ、キャプテン・ハーロックの服を。これまで人には内緒にしてきたがそういう仕事もしているのだ、私は。何を言っているのだ。本当はパーフェクトブルーのイベント。レックスが作品の宣伝のためにブースを出展しておりそのゲストとして呼ばれたのだ。モデルの女の子を雇って本編に登場するアイドルグループ「チャム」に仕立て上げ、架空のラジオ番組という設定で生放送をするという、いかにも「オッサン」の考えそうなアイディアだ。言いたいことは色々あるが私も既にオッサンの仲間入りをしていることだし素直に騙されていることにする。ああ、楽しそう。
 リアリティを感じないビッグサイトの建物そのものにも驚かされたが、生まれて初めて見るコミケは私にかなりの衝撃をもたらせた。テレビや雑誌が伝えるコスプレより生の方が何倍ものインパクトがあるではないか。自家製なのか特注なのかも定かではないが、それらの衣装は縫い物というより工作に近く、見ているだけで実に楽しい。何を元にしたコスプレなのか見当もつかないが、とりあえず綾波とアスカくらいは私にも判別がついた。もちろん衣装で、だ。キャラは作監が必要というより、全修した方が良いとは思うが、「オトッツアン、それは言わない約束よ」というものか。ブラックジャックの姿も見かけたが、コスプレして楽しいのか?あのキャラクターって。また売られている同人誌も噂には聞いてはいたが、その数といい体裁といい、そこにかけられた手間と暇と情熱は並々ならぬものでおそれ入谷の鬼子母神。決して侮ることなど出来はしない、と再認識させられる。日本は平和だ。不景気などどこ吹く風さ。
 物見遊山のつもりで来たが一応仕事もしてみる。30分のラジオ番組という設定で2回、セットの中に入り肌の露出部分が多い衣装のチャムの3人に囲まれ、キャバクラ状態で楽しいトーク。トークの弾むこと餅のごとし。しかもつきたて。辛いな。衆目の監視するところでの喋りは未だに苦手だ。もっとも私ではなく注目されてるのはチャムなのだがな。とは言えなかなか不思議な《婉曲な表現》目つきの方もおいでのようで、落ち着かない30分であった。

44
おお!フィルムから飛び出してきたようぢゃないか。

 2回とも好きな曲を一曲ずつかけて良いということになっていたので、当然のごとく平沢の曲をかける。1回目はP-modelで「Layer Green(オリジナル・バージョン)」、2回目は平沢ソロで「Lotus」。ちなみに会場では平沢関係の同人誌も販売してる人たちも沢山いらっしゃいましたが、私は冷やかしに行っただけで買いはしませんでした。ごめんなさい。
レックスのブースで販売していた「コミケ限定CD-ROM付きカレンダー」「テレカ付き映画前売り券」の方も、若干無謀とも思える価格設定にもかかわらず多くの方に購入していただいたようで、本当に有り難うございました。購入された方が、もしも後になって腹が立ったり、映画を見て憤懣やるかたないという激情に突き動かされても決してその矛先を私になど向けないように。何故ってそれは全部レッ

’97を振り返る

 今年も終わろうとしているので、年末らしく今年を振り返ってみることにしようか。いやはや何とも多忙を極めた年であった。去年から引き続きでパーフェクトブルーの仕事に追われるように始まった今年。ゼロ号試写が終わるまではろくに休みも取らなかった、というより休んで家にいるよりもスタジオで仕事をしていた方が精神衛生上よろしかったと言える。まあ、この辺のことは「パーフェクトブルー戦記」に詳しく書いていこうと思っているので、パーフェクトブルーの仕事が終わってからを振り返るとしよう。となるといきなり8月ということになる。作品完成後の社会復帰の第一弾として本格的フルデジタル劇場超大作「スチームボーイ」への参加を決めてみる。なんだか大変そうだぞ。なんといっても「バンダイの野望」の一環らしいからな、それはすごいことになるだろう。がんばってみようっと。
 「スチームボーイ」と同時に依頼された件が「PARCO PRESENTS デイジーVISIONS 大友克洋とデジタル新世代展」の仕事。現在渋谷のパルコ・パート3で開催中ですのでお暇な方はどうぞ。私が頼まれたのは同展のスクリーンで上映する「デジタルカットのメイキング」というビデオの監修。曖昧だな、「監修」というのも。私の作品というわけではないのでつまらなくても私に文句は言わないように。パーフェクトブルーの展示もありますが、これに関してはほとんど何もやってません。セルと背景を組んだくらいだ。クミが合わないカットが多くて苦労したなぁ……って、それが何で私の仕事やねん?
 それとこの展示会に付随して行われた「トークショー」とやらにも出演。大友氏、森本氏とともに最近の業界事情だの制作の苦労談などについてトークしてみた。変な仕事。会場には熱心な若者たちが詰めかけてくれたようで、質疑応答でもまじめな質問が多く大変楽しませていただいた。「どのくらい儲かるんですか?」言えるわけがないだろう。「超能力があったら何をしますか?」そういうことは藤子不二雄先生に聞いて下さい。ただしAの方。Fの方に聞くにはそれこそ超能力が必要です。
 さらにやはりこの展示会に絡んで森本氏と二人でテレビにも出てみた。テレビ東京深夜のとある番組。放送は既に終了しているので探さないで下さい。オンエアをちらっとチェックしたのだが、長髪を後ろで縛り、眼鏡をかけ、ひげを生やした小さいのと大きいのが並んで映っており若干笑えた。
 現在日本テレビ深夜に放送中のアニメ「剣風伝奇ベルセルク」というのがある。早とちりしないように。本編には何も関係してるわけじゃない。レンタル店によくある無料貸し出しのビデオに納めるとかいう音楽クリップの編集をしただけだ。何故にそんな仕事を引き受けたかと言えば、この作品の音楽が平沢だったというだけ。平沢 進とは何者かというと、ご存じ無い方のためには説明しない。とにかく私が普段愛聴しているミュージシャン、本人曰く「メディア使い」だそうだ。その平沢の曲に合わせて、放送済みの5回分からカットを編集したのだが、興味のある方もない方も見ないでよろしい。なぜなら私の意図してもいないカットが一つ混じってしまっているからだ。ほんの数フレーム、赤と青のパカパカが入ってしまった。やめろって。ともかく入れた覚えのないカットが混じってしまったので、この上もなく格好悪い。どうして私の仕事には、こうした普通ではあり得ない間違いが多いのか。奴らの仕業か? 誰だ?奴らって。「ミレニアム」の見過ぎか。最近はまってます。
 あまり大きな声では言えませんが原画の仕事もしてみました。パーフェクトブルーで原画をお願いした、酒飲み友達にして温泉番長、観劇隊長にして平沢仲間の中山勝一氏がビデオアニメのコンテ・演出をするというので、心ばかりのお返しのつもりで引き受けたものの、他の仕事に圧迫され返って迷惑をかけてしまった。10何カットか描いてみましたが、ほとんど動かせなかったのでほろ苦い原画デビューとなってしまった。だいたいあのキャラは私には描けません。ちなみに作品は「でたとこプリンセス/第2話」。私は別にしても原画のスタッフは豪華なようなので、興味のある人はチェケラッ!
 他に仕事といえば、やはりパーフェクトブルー絡みということになる。まずはポスター、カレンダーに使用するということで数枚の描き下ろし。ラジオドラマ「ダブルバインド」のCD化にともないキャラクターのデザインとイラスト。仕事とも呼べないような仕事として数々のインタビュー……とまあ、そんなところか。あと年内に控えてるのがイベントの出演と忘年会か。がんばろうっと。
 そういや、新作の企画というのも進行している。内容は言えないが、運が良ければそのうち日の目を見るかもしれないがどうなることやら。来年に期待。

mcSister!?

  さて目の前に一冊の雑誌がある。おやおや表紙には色々なことが書かれいるぞ。[今度のテーマは「地味かわいい」][新しいおしゃれのトビラを見つけたよ 17歳のフォーマル][「マイルールおしゃれ」見つけよう!][好きな人がいないのは、なぜ!?][おしゃれが楽しい! エム・シー・シスター]
 エム・シー・シスター、mcSister! 女子のファッション雑誌ではないのか!? しかもティーーーンの。嬉し恥ずかしこの響き、ティーン。なぜこんな私と縁もゆかりもない雑誌が手元にあるかといえば、万引きしたのだ。嘘。昨日インタビューを受けたのだ、エム・シー・シスター(婦人画報社)の。4月号だかに載るという「女子高生が選ぶ街で見かけた、いかがわしいおじさんベスト30」というコーナーで、光栄なことに私がベストテン入りを果たしたのだ。そんなわけないだろ。無論「パーフェクトブルー」の件だ。それにしてもエム・シー・シスターだぞ。「ミスター・ハイファッション」はいくら縁遠いと言っても、まだミスターだ。私だってミスターの端くれだ。青い目の人は呼ぶだろうさ、「Hey! Mister Kon.」。しかし、シスターだぞ。シスターと言われた日にはひざまづかにゃならんではないか。
 年末の忙しさと混乱から来る大ボケで打ち合わせを一つ飛ばし、取材の時間も一時間ほどずらしてもらうという失態を演じつつ、新橋のレックス事務所へ向かう。頭には一つの不安。エム・シー・シスターなどという名前からして可愛らしい雑誌の編集者が、もしむくつけきおっさんだったらどうしよう?。だとしても別にどうもしなくてもいいんだけど。不安とは裏腹に現れた編集の方は、大変良い感じの若い女性で一安心。しかし何だこの物々しく設置されたライティングは! 取り調べかはたまた拷問でも始まるのか。「お前が作ったんだな!?」「ぼ、僕じゃない……」「証拠は挙がってるんだ!」「本当に知らないんだ…」「一体何の目的でこんなバカな作品を作ったんだ。故郷の親御さんも泣いているぞ。」「う、うう……ぼ、ぼくは……すいません刑事さん…」カツ丼でも食わせてくれるのかな。それにしてもライトがまぶしいぞ。これでは広がった私のおでこも光り放題ではないか。いやん。
 作品のことを中心に聞かれるが、何故かいきなり「どんな高校生でしたか?」という質問が混じる。20年近くの遠い記憶の底から浮かび上がるあの忌まわしい出来事。その頃の私は少年刑務所で模範生としてボクシングの練習に励んでいた。そしてあの夏のくそ暑い日、奴がやって来た……終わり。実を言えば当時の私は、背が高く、眼鏡をかけていて、ニキビが多めで、今よりはおでこも狭く……外見は描写せんでもいいのか別に。一言で言えば「いやな奴」だ。というのも………当時の私を語るのはやめよう。
 今までいくつかのインタビューなどでも困った質問というのがあって、そのひとつに「タイトルのパーフェクトブルーの意味は?」というのがある。ははは、バカめ。別にないのだ、意味は。私がつけた訳じゃないし、原作小説の段階ではそれなりに意味はあったのだろうが、あれだけ話をいじくり回してはその意味すら失われているだろうし、だいたい私は原作を読んでいない。作品制作途中に私はタイトルは変更した方がよろしいという提案までしている。宮部みゆき氏の著作に同名の小説があるようだし(これも私は読んでません)、後出しじゃんけんで同じタイトルでは格好が悪いではないか。この質問をされる度にいい加減な答えをして凌いできたが、このインタビューで最大の難敵に出くわした。「この作品を見る女子高校生に何か一言。」「エ…………?」絶句。ただでさえおしゃべりなこの34歳の男を久々に黙らせてくれたな。そんな、あるわけないだろう、女子高生というターゲットが私の中に。私の負けだ。不覚のいたすところだ。何も思いつかないのであった。いやホントに正味の話。
 この女性編集者の方の質問や作品に対する感想を聞いていて発見があった。なんとパーフェクトブルーを見て、「怖かった。」というのである。そういえば確かにあれを見た女性の何人かは怖がってくれたらしい。さらに詳しく感想を聞いてみると、監督の私が意図した狙いに見事に騙されているではないか。偉いのか騙されやすいのか。ともかく国語の読解問題の解答としては満点差し上げる。そうだよな、分かりにくい話じゃないはずだからな。分かりやすい話に少々の「ひねり」をかけて、壊れた部分を入れてみたという程度だ。はなから壊れてるわけではないのだ。
 しかしサイコ・ホラー(笑)とかいう売り文句もあながち冗談ではないのか。今となっては最高法螺の方が良かったと思うけど。つまんねぇ。がっくり。
それにしてもそんな怖いのか、あれ。知らなかったなぁ。ついでにもう一つ教えてもらえば良かったなぁ、mcSisterのmcって一体何?

 

失礼な

  失礼だな「WIRED」という雑誌は。今発行されているこの雑誌に「パーフェクトブルー」で主役の声をやってくれた岩男潤子さんの記事が出ている。彼女の写真とコメントとともに同作品の紹介もされているのだが、その記載が「脚本・大友克洋、監督今 敏」ときたもんだ。脚本は村井さだゆき氏だ。失礼にも程があるではないか。紹介してくれるのは結構だがこんな不注意でバカな間違いをそのまま載せるんじゃない、まったく。
作品の宣伝などに関してビッグネームを出したがるのは仕方ないことだと思ってるし、目くじらをたてるつもりはない。確かに江口寿史はほんの何枚かではあるが、キャラクターのラフスケッチは描いたし、大友さんにしても企画協力はしたのだろう。だがしかし、この「パーフェクトブルー」という仕事で私は大友さんに一度たりとも会ってない。宣伝用のビデオが出来上がったときに「企画協力・大友克洋」というテロップを見て私は驚いたくらいだ。「あれ? 大友さんもなんかしてたんだ。」
 飲み屋で会ったときに氏に聞いたら、原作者の竹内さんと企画の岡本さんに業界事情なんかを教えたということであった。まさに企画協力だ。それ以上でも以下でもない。以前某バカスポーツ新聞に「大友克洋の新作/手紙爆弾アニメ」という記事がでて大変不快な思いをしたこともある。出版物に対する信用性は落ちる一方だ。ちゃんとしろよ、ちゃんと。
 それと同「WIRED」に現在のアニメ事情なんたらかんたら、というような特集がある。仕事仲間の森本氏や沖浦氏、夕べ吉祥寺の飲み屋で会った山賀氏をはじめ、不肖私のコメントだの写真なんかも出たりしているが、その記事の中で私の所属が「マッドハウス」となっているのも間違いだ。私はあくまでフリーの人間である。「パーフェクトブルー」を制作したのは「マッドハウス」であるからして間違いも許容範囲なのかもしれないが、前述したようにいい加減なところがある雑誌だからな。責任者出てこい。

 

アニリン

 うーむ世の中はポケモンブームか。流行ってるなぁ、赤と青のエクスタシー。インターネット上でもそういう冗談をいくつか見たが、あまり刺激しない方がよいとは思う。一応業界に携わる身としては、今回の事故を真摯な態度で受け止めることにしようっと。特にテレビ放送においては早めのガイドラインを設けるべきなんでしょうが、ことはそれだけで済むんでしょうかね? 今年はアニメの当たり年でもあり、多大な経済効果と文化的な影響力を認めながらもそういう現象を苦々しく思ってる人間も多いかと思われるし、そういう状況で起こった今回の事故が格好の突破口にならなければいいのだが。ああいう透過光のパカパカが規制されるだけなら問題ないし当然かと思われるが、そこから発展してまたぞろ始まるような気がするな、お得意の「暴力」「性描写」などの内容規制が。どこぞの頭の悪そうな政治家があの赤青のエフェクトを見て「洗脳云々」というような発言をしてたし。まぁ、それも仕方ないか。R指定映画監督としては「すいませんねぇ、ホントに」と謝るくらいしかできないし。アニメ倫理委員会の発足が待たれるところか。略して「アニリン」。可愛くてすてきな響きじゃないか「アニリン」。「アニリン」のキャラクターとか出来ちゃって、それが子供の間で大流行。アニメ化されちゃったりなんかして、一大ブームを巻き起こすことは間違いないだろうな。悪の組織「ボウリョッカー」や「エロチカ大魔王」と戦う正義の戦士・アニリン。子供たちを襲うボウリョッカーやエロチカ軍団を掴んでは投げ、投げては蹴り倒し、過激な暴力で敵がバラバラになるまでやっつけ、そして最後は必殺のリンリ光線! エフェクトは赤と青の……もうやめとこう。

怒濤のインタビュー

 声が枯れている。こともあろうに昨日インタビューアンド打ち合わせ5連投という暴挙に合いこの始末。新橋はレックスの事務所で、パーフェクトブルー公式ガイドブックとやらのためにインタビュー、続いては雑誌「ミスター・ハイファッション」。ハイファッション? ハイファッション!!? ハイファッションということは日本語に訳すと「大変おしゃれ」ということではないのか? ということは私なんかにはもっとも縁遠い世界ではないのか? インタビューのみで写真は無しだから良かったものの、顔なんか乗せられた日には末代までの恥だ。だってハイファッションだし。
 さらに続くは本の雑誌「ダ・ヴィンチ」。驚いたことにインタビューアーは顔見知りの人間で、おまけに同席していた編集者は、私の高校の同級生と現在仕事をしているという。狭い世界であることよ。
 さらに4連投目のインタビューは、なんと相手は青い目のイタリア人。イタリアの「ヤマト」という日本のアニメを扱っている会社だそうで、流暢な日本語を話す方だ。パーフェクトブルーをイタリアでも売るとか。青い目のイタリア人にこの作品はどう映るのでしょうか? より青く見えるのか、やっぱり。「いつもよりよけいに青くしております。」とか。
 作品内容から日本のアニメの現状、現代日本人若者気質、私の昔の漫画に関する話まで多岐にわたるインタビューで、よくまあ細かいことまで知っているイタリア人で、飽きずに話ができたことだ。とはいえ、午後の1時から始めたインタビューもこの時点で既に6時間ほどたっており、似たような内容を繰り返ししゃべり続けた私の喉はへたり始める。ラジオじゃないっての。
 どのインタビューアーも作品に対して好意的かつ、私にはとっては正当な見方をしてくれていたようで、大変喜ばしいことでした。もっとも作品を評価してないところはインタビューにも来てくれないと思うがな。いやだよな苦情を言いに来るインタビューとか。
「作品拝見しました。見るべき部分が一つもないものに仕上がってましたが、こんなものを作ってどうするつもりなのか、その辺のところからお聞かせください。」
「いや、始めたときは面白くなると思ったんですけど……」
「いかにも監督の力不足という感じですよね?」
「はい……仰るとおりで、やっぱり初めてでしたんで……。」
インタビューを受けながら頭の片隅では、『こんなことになったらいやだなぁ…』などと考えていたのであった。